コラム豆知識
物流倉庫における「原状回復義務」とは、賃貸借契約が終了し、倉庫を退去する際に、借りた側(賃借人)が物件を借りた時の状態に戻してから貸す側(賃貸人)に返還する義務のことを指します。
ただし、一般的に住居では対象外とされる通常損耗や経年劣化についても、事業用物件の賃貸借契約では、特約により借主の負担と定められていることが多く、これがトラブルの主な原因となります。
⚠️ 倉庫を借りるときの注意点・ポイント
1. 契約書の詳細な確認(最重要)
- 🏡 原状回復の範囲の明確化: 契約書に記載されている原状回復の範囲を徹底的に確認しましょう。特に、通常損耗や経年劣化(床の摩耗、壁の自然な汚れなど)が借主負担となる特約(特別の負担)の有無と、その負担範囲がどこまで具体的に記されているかを把握します。曖昧な表現を避けるよう、貸主に確認を求めることも重要です。
2. 契約前後の状態の記録
- 📷 事前の記録: 入居前に倉庫の既存の傷、汚れ、設備の破損状況(床のひび、シャッターのへこみなど)を詳細に写真や動画で記録し、書面で貸主と共有しておきましょう。これにより、退去時に「いつ発生した損傷か」を明確にし、不当な修繕費用の請求を防ぐことができます。
3. 造作物の取り扱いと撤去
- 🛠️ 設置物の承諾と確認: 業務の必要性から設置する間仕切り壁、事務所区画、特殊な重量ラック、エアコンなどの造作設備については、設置前に必ず貸主の書面による承諾を得ましょう。また、承諾を得る際に、退去時の撤去の要否や、残置を希望する場合の条件についても確認し、記録しておくことが大切です。原則、これらは撤去・復旧の対象となります。
4. 費用とスケジュールの管理
- 💰 費用と見積もり: 倉庫の原状回復工事は高額になる傾向があります。退去の数ヶ月前から複数の業者に見積もりを取り、適正な費用相場を把握しましょう。
- 📅 工事期間の確保: 倉庫の規模によっては工事に時間を要するため、退去日までに工事を完了させるために、余裕をもったスケジュールを組み、業者を選定する必要があります。
これらのポイントを事前に押さえ、貸主との認識のズレをなくしておくことが、退去時の無用な費用負担やトラブルを回避する鍵となります。