コラム豆知識

【コラム豆知識】普通借家契約のしくみ:事業の継続性を守る「安定」の契約

前回は「定期賃貸借契約」をご紹介しましたが、今回は事業用物件の賃貸でも一般的に使われる「普通借家契約」について解説します。企業が倉庫や店舗などの事業用不動産を借りる際、特別な定めがなければ、この「普通借家契約」が適用されることが多くあります。

1. 普通借家契約とは?

この契約形態の最大の特徴は、借りる側の事業の継続性を重視している点です。長期間、安心して物件を利用し続けられる仕組みとなっています。

【特徴】

  1. 更新が原則: 契約期間(一般的に2年間など)が満了しても、借りる側が「引き続き利用したい」と希望すれば、貸す側は正当な理由がない限り、更新を拒否することはできません。このため、一度契約すれば、借りる側はそこに長く設備を置き、事業を安定して継続することができます。
  2. 貸す側からの解約制限: 貸す側から「退去してほしい」と伝える場合、単に「期間が過ぎたから」という理由だけでは認められず、非常に厳しい「正当な理由」が必要となります。これは、企業のサプライチェーンや物流拠点としての利用を保護するためです。

2. 定期借家契約が生まれた背景

以前は、この借りる側が手厚く守られる「普通借家契約」しかなかったため、貸す側にとっては、一度貸すと簡単には戻ってこないというリスクがありました。特に将来的に建物を建て替えたい、または売却したいといった場合に問題となります。

そこで、貸す側の事情にも配慮する形で、「契約で決めた期間が来たら、必ず契約が終了する」という仕組みを持つ「定期借家契約」が導入されました。(借地借家法改正:2000年3月1日施行)

定期借家契約では、期間満了とともに契約が終了し、原則として更新はありません。詳しくは前回のコラムを参照ください!

3. 契約時に確認すべき大切なこと

普通借家契約か定期借家契約かを選ぶのは、基本的に貸す側(オーナー)の判断となります。

借りる側(企業)としては、「長期間にわたり安定して利用できる安心感」を選ぶか、あるいは「期間の定めがある代わりに賃料などが割安になっている可能性」を選ぶか、事業計画に合わせて判断することになります。

倉庫や事務所などの事業用物件を探す際には、必ず契約書に記載された「契約の種類」を確認し、自社の事業計画と合っているかチェックすることが重要です。